とらりもんHOME  Index  Search  Changes  Login

デジタルカメラ入門

はじめに

デジタルカメラは様々な機能を持っています。しかし,デジカメを普通に使う分には「様々な機能」を使いこなす必要はありません。
オート撮影モードを使えば,その辺の設定はカメラが勝手にやってくれるからです。

オート撮影はすごい技術です。写真やカメラの知識がなくてもボタンを押すだけでいい感じの写真が撮れます。ハイテクです。
「細かいことはともかくとりあえず写真を撮りたい」という場合はオート撮影で充分です。

とはいえ,オート撮影で得られる写真は「カメラ内部のプログラムに従って撮られた」写真です。
乱暴に言ってしまえば,しょせん,決められた手順に従って機械が機械的に撮った写真です。
そうやって撮られた写真が,人間である撮影者の意図するところと合致するとは限りません。

合致しないとき――「こういう写真を撮りたい」と頭の中で思い描く写真が撮れないときはどうするか。
そのようなときには,デジカメの様々な機能を(ある程度まで)駆使しなければなりません。
機能の調節をカメラにやらせるオート撮影モードではなく,撮影者が機能を調節するマニュアル撮影モードで写真を撮るのです。

「こういう写真を撮りたい」というのは,芸術的な写真を撮る場合に限った話ではありません。
科学的な研究を行う上でも(たとえばフィールド調査に出たときなど)狙ったとおりの写真を撮る技術は重要です。
ここでは,マニュアル撮影や写真について,初歩的なことがらを解説します。

と,前書き堅いですが,カメラの構造や撮影の仕組みについて深いところまで立ち入っては説明しません。
「デジカメにはこういう機能があり,これをこういじると,こういう写真が撮れる」というノウハウ的な感じです。
ぜひ,手持ちのデジカメで実際に試しながら読んでください。
ただし,最近のデジカメにはマニュアル撮影モードを搭載していない機種も多々あります。
手持ちのデジカメでマニュアル撮影が行なえるかどうかは取り扱い説明書等で確認してみてください。
(筑波大流域研のメンバーへ: 割といいデジタル一眼カメラが1階にあるのでそれ使ってください。取説は,入って右手棚上段のどこかにあります)

始める前に一つだけ

オートモードで写真を撮るのには,ほとんど時間はかかりません。シャッターボタンを押すだけです。一瞬で済みます。
それに対して,マニュアル撮影で写真を撮るのはけっこう時間がかかります。撮影して得られた写真を確認し,気に入らなければ設定を変えてまた撮影して写真を確認し,
それでも気に入らなければまた撮影して写真を確認し……と,対話的に設定を変えていく必要があるためです。

「写真は一瞬で撮れるもの」と考えていると,気が急いてしまいます。
「良い写真を撮るのには時間がかかるもの」と考えて,気長に撮影をするのが,マニュアルモードで写真を撮影するときのコツだと思います。

それでは以下,本編です。

写真の明るさを操る

カメラというものを一言で表すなら,「光を取り込み,記録する装置」です。
光を上手くカメラに取り入れ,写真の明るさを自在に操れるようになることが,デジカメ理解の第一歩です。

デジカメが世に出る前のカメラはフィルムを使って光を記録していました。デジカメにおいてフィルムにあたる部品は,撮像素子と呼ばれる電子部品です。
写真を得るべく,(フィルムまたは)撮像素子に光をあてることを露出(exposure)といいます(露光ともいいます)。

撮像素子に,光を長時間あてつづけるか,あるいは強い光をあてると,全体的に明るい写真が撮れます。
逆に,光をあてる時間が短いか,あるいはあてる光が弱いと,全体的に暗い写真が撮れます。

その辺の調整が上手くいっていて,目で見た明るさと同じ明るさで撮影された写真を「適正露出で撮影されている」と表現します。
目で見たよりも明るい写真は「露出オーバー」,暗い写真は「露出アンダー」と表現されます。

露出を操るのに関わってくる機能は,次の3つです:

  • シャッタースピード
  • F値
  • ISO感度

順番に説明します。

シャッタースピード

写真を撮らないとき,外部の光はシャッターによって遮られ,撮像素子にはあたらないようになっています。
シャッターボタンを押すと,シャッターがはね上がり,撮像素子に光があたります。
一定時間が経つとシャッターは自動的に元の位置に戻り,撮像素子には光があたらなくなります。
シャッターが開いているあいだに撮像素子が受けた光によって,1枚の写真(画像)が得られます。
シャッターがはね上がってから元の位置に戻るまでの時間,言いかえれば,撮像素子が光を受けている時間をシャッタースピードと言います。

撮像素子が受け取る光の量が多くなるため,シャッタースピードが長ければ長いほど明るい写真が得られます。
単純に,シャッタースピードを2倍の長さにすれば,明るさが2倍の写真が得られます。

たとえば,こんな感じです

次の3枚の写真を見てください。いずれも,カーテンを引いて薄暗くした室内で撮った写真です(フラッシュは焚かないようにセットしました)。

digicam_exp01s.jpg digicam_exp02s.jpg digicam_exp03s.jpg

digicam_exp01.jpg digicam_exp02.jpg digicam_exp03.jpg ←サイズの大きいオリジナルファイル

一番左の写真はオートモードで撮影しました。オートで撮影すると,カメラが自動的に露出を調節して適正露出で写真を撮ってくれます。
見た目,だいたいこれくらいの明るさでした。シャッタースピードは1/60秒(0.017秒)でした。

ここで敢えて,より明るい写真を撮ってみます。
真ん中の写真はシャッタースピードを2倍にして,1/30秒(0.033秒)で撮ったものです。
右の写真は,シャッタースピードをさらに2倍にして,1/15秒(0.066秒)で撮ったものです。
右に行くほど明るくなっていることがわかります。もちろん,シャッタースピードを短くすれば,暗い写真を撮ることもできます。

ここで重要なことは,「カメラの設定を変えるだけで写真の明るさを自在に調節できる」ということです。
外界が暗くても,明るい写真を撮ることができるし,外界が明るくても,暗い写真を撮ることができるのです。

Tips

  • シャッタースピードは,0.1秒より短いときは小数ではなく分数で表示することが普通です。
  • 撮影に掛かる時間が思ったよりも短いと驚いた人もいるのではないでしょうか。1/60秒で0.02秒ですよ。
    快晴の屋外であれば,1/1000秒くらいでも充分に適正露出で撮影できたりもします。
    • デジカメで写真を撮ると,次の写真を撮れるようになるまで数秒くらい待ち時間がありますが,
      あれは撮影に時間が掛かっているわけではなく,内部での処理やSDカードへの保存に時間が掛かっているのです。

F値

カメラにはしぼりという装置がついています。しぼりを操作することで,単位時間あたりにカメラに入ってくる光の量を調節できます。

  • しぼりを開くほど,カメラに入ってくる光の量は増え,そのぶん明るい写真が得られます。
  • しぼりを閉じるほど,カメラに入ってくる光の量は減り,そのぶん暗い写真が得られます。

しぼりはレンズの裏側に仕込まれており,しぼりを閉じるごとに,レンズは外周部から徐々に遮られていきます。
動物の目で言うと,しぼりは虹彩にあたります。(水晶体がレンズにあたり,しぼりによって遮られていない部分が瞳孔にあたる)

「しぼりによって遮られていない部分」の直径を有効口径と呼びます。
「しぼりがどれくらい閉じられているか」(別の言い方をすれば「レンズがどれくらい遮られているか」)を直接表す指標は有効口径ですが,
実際のところ,有効口径に反比例するF値(エフち)を指標として用いることが多いです。
(F値の定義: f/d ...f: レンズの焦点距離, d: 有効口径; つまりF値は無次元)

写真の明るさは,「単位時間あたりにカメラに入ってくる光の量」に比例します。
「単位時間あたりにカメラに入ってくる光の量」は,「レンズの開いている部分の面積」に比例します。
「レンズの開いている部分の面積」は,有効口径の2乗に比例します。円の面積 ∝ (円の直径)^2
すなわち,有効口径をルート2倍すると,「レンズの開いている部分の面積」は2倍になり,写真の明るさは2倍になります。
F値は有効口径に反比例するため,結局,F値を1/ルート2倍すると,写真の明るさは2倍になります。
あるいは,F値をルート2倍すると写真は1/2倍明るくなる(=2倍暗くなる)と考えても構いません。

たとえば,こんな感じです

次の3枚の写真は,シャッタースピードの項で示した写真と同じ条件下で撮ったものです。

digicam_exp01s.jpg digicam_exp04s.jpg digicam_exp05s.jpg

digicam_exp01.jpg digicam_exp04.jpg digicam_exp05.jpg

一番左の写真はオートモードで撮影した写真です(シャッタースピードの項の左側の写真と同じもの)。 シャッタースピードは1/60秒で,F値は3.3でした。

ここで敢えて,シャッタースピードを固定したまま(1/60秒),より暗い写真を撮ってみます。
真ん中の写真はF値をルート2倍にして,4.7で撮ったものです。右の写真は,F値をさらにルート2倍して,6.7で撮ったものです。
右に行くほど暗くなっていることがわかります。

Tips

  • F値のことを「絞り値」と呼ぶこともあります。
  • 慣習的に,F値は,数値の先頭にFという文字を付けて表示することが多いです。以後付けます。

ISO感度

デジカメにおいてはフィルムに相当する部品が撮像素子であると述べました。
撮像素子は,受けた光の量に応じた量の電荷を発生させる装置です。その電荷を信号に変換し,信号をデジカメ内で処理することで画像が生成されます。
ここで,「電荷の量に対してどれくらいの強さの信号を発生させるか」(電気工学でいうゲイン)を調節することができます。つまり,光量に対する感度を調節できるのです。
デジカメでは,撮像素子の感度のことを,ISO感度と呼びます。

  • ISO感度を上げることで,電荷が少なくても(受けた光が弱くても),強い信号を出すように調節することができます。つまり,出来上がる写真は明るくなります。
  • ISO感度を下げることで,電荷が多くても(受けた光が強くても),弱い信号に留めるように調節することができます。つまり,出来上がる写真は暗くなります。

ISO感度は,100, 200, 400などのキリのいい整数値で統一されており,数値を大きくするほど明るい写真を得ることができます。
単純に,数値を2倍にすると明るさが2倍の写真が得られます。数値自体は,物理的な背景を(たぶん)持たない無次元数です。

たとえば,こんな感じです

次の3枚の写真は,シャッタースピードの項で表示した写真と同じ条件下で撮ったものです。

digicam_exp01s.jpg digicam_exp06s.jpg digicam_exp07s.jpg

digicam_exp01.jpg digicam_exp06.jpg digicam_exp07.jpg

一番左の写真はオート撮影で撮った写真です(シャッタースピードの項の左側の写真と同じもの)。ISO感度は100でした。(シャッタースピードは1/60秒,F値はF3.3)

ここで,シャッタースピード・F値を固定し,ISO感度だけを変えて撮影を行いました。
真ん中の写真はISO感度を2倍にして,200で撮ったものです。右の写真は,ISO感度をさらに2倍にして,400で撮ったものです。
右に行くほど明るくなっていることがわかります。

感度を上げると手軽に明るい写真を撮れて便利ですが,感度を上げるほど画質が悪くなりがちです。
素子内に流れているノイズとなる電流を拾いやすくなるためだそうです(すみません,よく知りません)。
感度を上げたために画質が悪くなった例を後ほど紹介します。感覚的には,ISO感度800以上から画質が劣化し始めて,上げれば上げるほど,「ざらざらした」写真になる感じがします。

Tips

  • 「ISO感度」の「ISO」は国際標準化機構のISOです。
  • ISO感度のことを,単に「ISO」と呼んだり,単に「感度」と呼んだりすることもあります。

ここまでのまとめとEV

ここまでの写真を並べてみます。

digicam_exp01s.jpg digicam_exp02s.jpg digicam_exp03s.jpg digicam_exp04s.jpg digicam_exp05s.jpg digicam_exp06s.jpg digicam_exp07s.jpg

左の写真から順に「写真1」「写真2」...「写真7」と名前を付けて,(シャッタースピード,F値,ISO感度)という形で撮影時のカメラの設定をまとめます:

  • 写真1: (1/60, F3.3, 100)
  • 写真2: (1/30, F3.3, 100)
  • 写真3: (1/15, F3.3, 100)
  • 写真4: (1/60, F4.7, 100)
  • 写真5: (1/60, F6.6, 100)
  • 写真6: (1/60, F3.3, 200)
  • 写真7: (1/60, F3.3, 400)

繰り返しになりますが,大事なことは,上の7枚の写真はどれも同じ光環境で撮られているという事実です。
カメラの設定を変えることで撮影条件によらず,写真の明るさや暗さを調節できるのです。

さて,ここまで,露出に関わる3つの機能: シャッタースピード・F値・ISO感度を紹介しました。
これらの値の変化量と写真の明るさの変化量がどのような関係にあったか整理します:

  • シャッタースピードを2倍にすると,写真は2倍 明るくなる。
  • F値をルート2倍すると,写真は1/2倍 明るくなる(2倍暗くなる)。
  • ISO感度を2倍にすると,写真は2倍 明るくなる。

これらをひとまとめにした,露出の指標になる値がEV(Exposure Value)です。 EVは次の式で定義されます:

EV = log_2 T + 2log_2 A - log_2( ISO / 100 )

ここで,Tはシャッタースピードの逆数(から次元を取ったもの)です。たとえばシャッタースピードが1/60秒なら,T = 60 です。
AはF値の値です。たとえばF値がF3.3なら,A = 3.3 です。
ISOは感度の値です。たとえば,ISO感度が100なら,ISO = 100 です。

具体的にEVを計算してみましょう。 たとえば写真1では,T = 60,A = 3.3,ISO = 100なので,

EV = log_2 60 + 2log_2 3.3 - log_2( 100 / 100 ) = 9.4

ややこしく見えますが,EVは単純な値です。 いくつかの特徴を見てみましょう:

  • Tを2倍すると(シャッタースピードを1/2倍にすると),EVは1だけ大きくなる。
  • Aをルート2倍すると(F値をルート2倍にすると),EVは1だけ大きくなる。
  • ISOを2倍すると(感度を2倍にすると),EVは1だけ小さくなる。

つまり,EVが1だけ大きくなると写真の明るさが半分になり,EVが1だけ小さくなると写真の明るさが2倍になるわけです。

また,EVが一定になるように保てば,写真は一定の明るさになることがわかります(ただし,撮影時の光環境が同じであることが前提)。
つまり,シャッタースピード・F値・感度をそれぞれ変化させたとしても, EVが変わらないように値を組み合わせれば,写真の明るさを一定に保つことができるのです。
言い換えれば,同じ被写体を同じ明るさとなるように撮影するにも,設定の組み合わせはいくつもあるのです。

たとえば,写真2と写真6は同じ明るさに見えます。実際,EVをそれぞれ計算すると同じ値になります:

写真2:EV = log_2 30 + 2log_2 3.3 - log_2( 100 / 100 ) = 8.4
写真6:EV = log_2 60 + 2log_2 3.3 - log_2( 200 / 100 ) = 8.4

実際には,EVを計算しながら撮影する必要はありません。
オート撮影であればその辺の調節はすべてカメラが自分でやってくれますし,マニュアル撮影であっても,
「今の設定で撮影を行うと適正露出か,露出オーバーか,露出アンダーか」を視覚的に示すインジケータがディスプレイに(あるいはファインダーの覗き窓の中に)
表示されているはずです。それを見ながらいずれかの値を大きくしたり小さくしたりすればOKです。

Tips

  • デジカメの中には露出計(TTL露出計: through to lens 露出計)が仕込まれており,デジカメは,常に外界の光の強さを測定しつつ,設定を変えたり,インジケータを表示したりしています。

なぜ,露出に関わる設定が3つもあるのか

しかしなぜ,露出に関わる設定が3つもあるのでしょうか?
これらの設定を変えることで露出を自在に操れることはわかりました。EVが同じになるように値を組み合わせれば,同じ明るさになることもわかりました。
しかし,露出に関わる機能は1つあればそれで充分な気もします。たとえばシャッタースピードを任意に選べるようにすれば,任意の露出で写真を撮ることができます。
そうなってしまえばF値や感度は必要ないのではないでしょうか?

話はそんなに簡単ではないのです。実は,シャッタースピードとF値は露出以外にも役割を持っているのです。(感度の役割は露出だけ)
次節以降,シャッタースピードおよびF値の大小が,写真にどう関わってくるのかを説明します。


動く被写体を撮影する

まずは,シャッタースピードの,露出以外の役割について見てみましょう。 シャッタースピードは,動いている被写体をどう写すかに関わってくるのです。

シャッタースピードは,シャッターボタンを押してシャッターがはね上がってから元の位置に戻るまでの時間でした。 言いかえれば,カメラが外界の様子を捉える時間間隔なのです
したがって,動く被写体を撮影する際に,

  • シャッタースピードを長くすれば,被写体の動きを捉えた写真を撮影できます。
  • シャッタースピードを短くすれば,被写体が止まっているかのような写真を撮影できます。被写体の動きの「一瞬」だけを捉えるのです。

たとえば,こんな感じです

次の二枚の写真は回っている換気扇を写したものです。

digicam_shutter01s.jpg digicam_shutter02s.jpg

digicam_shutter01.jpg digicam_shutter02.jpg

左の写真は,シャッタースピードを長くして撮ったものです(シャッタースピード: 1秒,F値: F7.1,ISO感度: 200)。
写真(静止画)であるにも関わらず,換気扇が回っていることがわかります。まさに被写体の動きを捉えてます。

それに対して,右の写真はシャッタースピードを短くして撮ったものです(シャッタースピード: 1/500秒,F値: F2.8,ISO感度: 800,フラッシュを焚いた)。
これは換気扇を止めて撮影したわけではありません。回っている換気扇を撮ってます。
しかし,シャッタースピードがごく短いため,止まってるように見えるのです。まさに「一瞬」を捉えています。 僕んちの換気扇が汚いことも捉えています。


もう1つ例を挙げます。次の二枚の写真は,流れている水を写したものです。

digicam_shutter03s.jpg digicam_shutter04s.jpg

digicam_shutter03.jpg digicam_shutter04.jpg

左の写真は,シャッタースピードを長くして撮ったものです(シャッタースピード: 1/30秒,F値: F7.6,ISO感度: 100)。
こちらの写真は,連続的というか,サラっとして見えます。水の流れを感じます。

右の写真は,シャッタースピードを短くして撮ったものです(シャッタースピード: 1/1000秒,F値: F2.8,ISO感度: 400)。
こちらの写真は,断片的というか,ジャブジャブして見えます。さらさら流れているように見える水でも,一瞬一瞬はけっこう激しく動いていることがわかります。

シャッタースピードを変えて,動いている被写体を撮影してみましょう。
シャッタースピードを長くする場合も短くする場合も,我々の目が捉えている様相とは違う写真が撮れると思います。

ただし,シャッタースピードを大きく変える場合は,露出に気を払いましょう。

  • シャッタースピードを長くするときは,F値を大きくする,感度を下げるなどして,暗くなるように。
  • シャッタースピードを短くするときは,F値を小さくする,感度を上げる,フラッシュを焚くなどして,明るくなるように。

手ブレと被写体ブレ

シャッタースピードが長いときに気をつけないとならないのが,ブレです。

ブレには2つの種類があります。

  • 撮影しているあいだに被写体が動いてしまうために起こるブレ。これを被写体ブレと呼びます。
  • 撮影しているあいだにカメラが動いてしまうために起こるブレ。これを手ブレと呼びます。

以下の3枚の写真を見比べてみてください。

digicam_shutter05s.jpg digicam_shutter06s.jpg digicam_shutter07s.jpg

digicam_shutter05.jpg digicam_shutter06.jpg digicam_shutter07.jpg

一番左の写真は,手ブレも被写体ブレも起きていない,普通の写真です。僕です。

真ん中の写真は,被写体ブレが起きている写真です。
カメラは動いていませんが,被写体が動いてしまうことで被写体の動きが写真に反映されています。
被写体ブレは,必ずしも悪いものではありません。上に示した換気扇や流水の写真のシャッタースピードが長い方,
これらも「被写体の動き」が写真に反映されているため,ある意味,被写体ブレを起こしている写真ですが,ミスとは言い切れません。
私を撮影した真ん中の写真も,(好意的に解釈すれば)躍動感を映し出していると言えなくもないです。
被写体の動きの一瞬を捉えたい場合なら被写体ブレは失敗。そうでないなら,被写体ブレも悪くはない。ケースバイケースです。

それに対して,手ブレは,写真全体が不鮮明になってしまうため,完全なる失敗です。
しかし,写真を撮影する際に最も起こりやすいミスは手ブレであると言っていいでしょう。
右の写真は,手ブレが起きている写真です(わざとカメラを動かしたのでちょっと大げさですが)。
撮影中にカメラがわずかでも動いてしまうと,カメラ自体の動きが写真に反映されてしまいます。
シャッタースピードがある程度よりも長くなると,手ブレの発生を抑えるのは難しくなってきます。

カメラを手に持った状態で,カメラを一切動かさずに固定するのは難しいものです。
普段は意識しませんが,我々の体は,常に,微妙にふらついています。病気とかじゃなくて生理現象として。
また,手や指先も常に細かく震えています。試しに,カメラを持つ形で両手を構え,目の前にかざしてみてください。
じっと見ていると,「震え」と聞いて思い浮かぶほどではないですが,手や指先が細かく動いているのに気がつくと思います。

これらの体や手や指先の無意識の動きがカメラに伝わり,手ブレを引き起こします。
シャッタースピードが短く,瞬間的に撮影が終了する場合は,それらの動きが伝わる間もなく撮影が行われますが,
シャッタースピードが長くなると,それらの動きが手ブレとなって現れるわけです。

シャッタースピードを長め(1/15秒〜1秒くらい)に設定して(F値や感度を変えて適正露出にして),写真を撮ってみましょう。
ブレのない鮮明な写真を撮影できたならば,あなたは並外れたバランス感覚を持っていると言えます。
私の感覚では,シャッタースピードが1/30秒よりも長くなったときには手ブレの発生を覚悟します。

手ブレを避けるためには,とにかくカメラを固定する必要があります。カメラを三脚に固定するのがベストです。
三脚がない場合は,腋を締めてカメラを構える・何かに寄りかかって撮影を行なう・座って撮影を行なう・何か手近なものの上にカメラを置いてしまう。
このような手が有効です。ともかく,カメラが動かないようにすることが肝要です。

また,シャッターボタンを押す動作でも微妙にカメラが動いてしまい,それが手ブレに繋がることもあります。
それを避けるためには,手持ちで撮影する場合でも,三脚に固定して撮影する場合でも,敢えてセルフタイマーを使うという手があります。
セルフタイマーを使えば,シャッターボタンを押すタイミングと撮影を行うタイミングをずらすことができるわけです。
カメラメーカーもそのあたり心得ていて,シャッターボタンを押して2秒後に撮影を行う,待機時間短めのセルフタイマーが大抵の機種に搭載されています
(集合写真を撮るときに使うセルフタイマーは,普通,シャッターボタンを押して10秒後に撮影を行います)。

Tips

  • 最近のデジカメはだいたい手ブレ補正がついているので,それを使うのも手です。
  • デジカメのモニターは小さいので,撮影した写真を再生しても手ブレが起きているのかどうかハッキリわからないことがあります。
    再生した画像を拡大して見る機能がデジカメに搭載されているはずなので,シャッタースピードが長めになってしまった場合は
    その機能で細部まで確認してみるといいでしょう。

被写体を鮮明に写す

続いて,F値が持つ露出以外の役割について見ていきます。 F値は,写真の鮮明さに関わります。

たとえば,こんな感じです

写真を使って説明します。以下の4枚の写真を見てください。いずれも,池を背景にして,テーブルの上に置いた湯飲みを撮影したものです。

digicam_Fnumber01s.jpg digicam_Fnumber02s.jpg digicam_Fnumber03s.jpg digicam_Fnumber04s.jpg

digicam_Fnumber01.jpg digicam_Fnumber02.jpg digicam_Fnumber03.jpg digicam_Fnumber04.jpg

一番左の写真は,写りこんでいるものすべてが鮮明です。テーブルに載せた湯飲みも後ろの池も,すべてはっきりと写っています。
(シャッタースピード: 1/20秒, F値: F22, ISO: 100)

左から2番目の写真は,湯飲みだけが鮮明に写っていて,背景の池は不鮮明です。「湯飲みにピントが合っている」状態です。それに対して,池はボケている
(シャッタースピード: 1/800秒, F値: F3.5, ISO: 100)

左から3番目の写真は,湯飲みは不鮮明ですが,背景の池は鮮明に写っています。「背景の池にピントが合っている」状態です。湯飲みはボケている。
(シャッタースピード: 1/800秒, F値: F3.5, ISO: 100)

一番右の写真は,写りこんでいるものすべてがボヤっとしています。「何にもピントが合っていない」状態です。いわゆる「ピンボケ」です。失敗です。

普通に写真を撮るのなら,いちばん左の写真のように,すべてを鮮明に写すのがいいでしょう。

しかし,左から2枚目の写真,これはこれでアリです。 ボケている背景よりも,鮮明に写っている湯飲みに自然に目が行くため,「湯飲みを強調したい」という意図を感じます。
湯飲みの代わりに美人さんに立ってもらえば,いい感じのポートレート写真になりそうです(背景がちょっと殺風景でしょうか)。

左から3枚目の写真は,これはちょっと微妙です。 湯飲みの代わりに美人さんを置くと,美人さんは不鮮明で池が鮮明です。シュールです。
(池をメインに写したいならともかく)メインとなる被写体が不鮮明な場合, 通常,これも「ピンボケ」と見なされます。失敗です。

一般に,F値を大きくすればするほど,全体的に鮮明な写真を撮影することができます。 鮮明な写真を撮影するならば,F値をなるべく大きくするといいでしょう。
(ただし,写真の鮮明さを決めるファクターはF値だけではありません。カメラの分解能(許容錯乱円の大きさ)・ズーム具合(レンズの焦点距離)・被写体までの距離もかなり関わってきます。
このあたり,「被写界深度の定量化」というテーマで近日公開予定(予定!))

人物・動物・植物などを撮影するときには,被写体にはピントが合っているけど背景はボケている, という写真を撮ると「写真上手いね!」と褒めてもらえやすいです。

撮影例: 犬, 花,トンボ

digicam_Fnumber05s.jpg digicam_Fnumber06s.jpg digicam_Fnumber07s.jpg

digicam_Fnumber05.jpg digicam_Fnumber06.jpg digicam_Fnumber07.jpg

ピントの合わせ方

被写体にピントが合っていない(被写体が不鮮明な)写真は残念なものです。 被写体にピントを合わせるにはどうすればいいでしょうか。

実は簡単です。大抵のデジカメにはオートフォーカスAFと略される)の機能が付いています。
オートフォーカス機能を使えば,「撮影者がどこにピントを合わせようとしているか」をデジカメが察知し,被写体にピントが合うように自動的に調節してくれます。
オートフォーカスを働かせるには,ピントを合わせたい被写体に向かってカメラを構え,シャッターボタンを半押しにするだけでOKです。
基本的に,シャッターボタンを半押しにした段階でモニターの中央に写っているものにピントが合います。
ピントが合った段階でシャッターボタンを押し込めば,そのまま撮影できます。ハイテクです。

オートフォーカスは優秀な機能ですが,しかし,写したいものにどうも上手くピントが合わない,ということもあります。デジカメも機械なので仕方ありません。
そういうときには,マニュアルフォーカスMFと略される)を使いましょう。マニュアルフォーカスを使えば,手動で,ピントを合わせる位置を決めることができます。

Tips

  • カメラのモニターでは手ブレが起きているか否かを確認しづらいのと同様に,ボケてしまっているか否かも,カメラのモニターでは確認しづらいです。撮影した画像を拡大して確認してみるといいでしょう。
  • ブレとボケは,写真が不鮮明になるという点でどちらも似ていますが,発生要因は全く異なります。このあたり区別できていると,「わかってるな!」という感じがします。

その他の機能

ここまで,露出に関わる3つの要素(シャッタースピード,F値,ISO感度)について説明してきました。
最初に述べたように,(デジタル)カメラというのは,「光を取り込み,記録する装置」なので,
露出に関わる機能を知ることが,(デジタル)カメラを上手く扱うための第一歩であると言えます。

デジカメには,ここでは紹介していない様々な機能も数多く搭載されています。
デジカメに興味を持ったなら,以下のキーワードについて調べてみるといいでしょう:

  • Sモード(またはTvモード),Aモード(またはAvモード)
  • 露出補正(またはEVシフト)
  • ブラケティング
  • ダイナミックレンジ
  • 測光方式
  • ホワイトバランス

ググって調べるのもいいですが,デジカメの取り扱い説明書を一読することをおすすめします。
(デジカメに限らず)取説というのは情報の宝庫です。実を言うと,露出とかシャッタースピードとかF値とかISO感度とか,
この記事のメインコンテンツに関する情報も,たいてい,取説に掲載されています。
上に挙げた機能についても解説されているはずです(機種によっては搭載されていない,あるいは,名称が違うかも知れません)。

各種の設定値はどこに記録される?

撮影の際に各種の機能を設定するわけですが,後からそれらの設定値を確認することはできないのでしょうか?
デジカメで撮影された写真の画像データを手に入れたとき,その写真がどのような設定で撮影されたか確認する術はあるのでしょうか?

あります。実は,デジカメが記録する画像データには,Exif(イグジフ)という,各種の設定値が保存される領域が存在しています。
撮影が行われたときの設定値は自動的にそこに記録されます。

Exifに記録されている情報を確認するのは簡単です。画像を右クリックして「プロパティ」を開いてみましょう。
「詳細」などのタブを選択すれば撮影時の設定のリストが出てきます。
ただし,この方法で確認できる情報は,Exifに保存されている情報の一部だけです。主な項目だけです。
Exifに保存されているすべての情報を確認したいときは,Linuxユーザーなら,jheadというコマンドを使うといいでしょう。

$ jhead 写真のファイルネーム

jheadの出力例を貼ろうかと思いましたが,長いのでやめます。

WindowsやMacを使っている場合でも,「Exif ビューア」なんかでググると,Exifを見るためのフリーソフトがたくさん出てくると思います。

よくあるミスと回避方法

デジカメの基本的な機能について見てきました。
最後に,ここまでに学んだことの応用例として,写真を撮る際に犯しやすいミスと,その解決方法を見てみましょう。
ここまでの知識を使えば,ありがちなミスの発生原因を理解し,それを回避する方法も理解することができます。

それほど明るくない場所での撮影

シャッタースピードが長くなると手ブレが起こりがちであることは既に述べました。
手ブレが発生する危険は常に存在しますが,特に,屋内や,明け方や夕方の屋外で撮影する際には気をつけるべきです。

ヒトの感覚は,刺激に対して対数的に反応します(フェヒナーの法則)。視覚に関して言えば,

  • 弱光環境でも,実際よりも暗くは感じない。
    • 太陽光に比べて月明かりはものすごく暗いはずですが,月さえ出ていれば夜でも周りの様子はそこそこわかります。
  • 強光環境でも,実際よりも明るくは感じない。
    • 目が眩むほどの光を浴びた直後に,その光の強さが2倍になったとして,「明るさが2倍になった!」とは感じ取れない気がします。

ヒトの感覚に対して,カメラは,光の強さを素直に記録します。
そのギャップを理解していないと,たとえば夕方,我々の感覚としては「まだ明るい」と感じる状況でも,
気付かぬうちにシャッタースピードが長くなっていて,後で写真を見返してみると,手ブレた写真ばかり撮っていた,という事態がまま起こりえます。
オートモードで撮影する場合でもシャッタースピードだけは確認するクセをつけるといいでしょう。

Tips

  • 森林内で撮影する際にも同様の注意が必要です。(森林内は案外暗いのです)

暗い場所での撮影

暗い場所で写真を撮るにはどうすればいいでしょうか。夜間の屋外や,電灯の点いていない屋内などです。

まず思いつく対策は,フラッシュを焚くことでしょう。もちろん,有効な手です。
しかし,露出に関する知識を応用すれば,フラッシュだけが解決方法ではないことがわかるはずです。
シャッタースピードを長くする,あるいはISO感度を高くすれば,かなり暗い場所でも明るい写真を撮影することができます。

次の写真を見てください。夜22:30ごろに,大学構内で撮影した写真です。

digicam_commonmiss01s.jpg digicam_commonmiss02s.jpg digicam_commonmiss03s.jpg

digicam_commonmiss01.jpg digicam_commonmiss02.jpg digicam_commonmiss03.jpg

一番左の写真,これが適正露出です。目に見える景色はこんな感じでした。灯りの周囲しか見えませんでした。(シャッタースピード: 4秒, F値: F4.0, ISO: 100)

真ん中の写真,どうでしょうか,左の写真と同じ場所から撮影しました。建物の形や色が鮮やかに写し出されています。
これは,シャッタースピードをかなり長めに設定して撮影した写真です。(シャッタースピード: 30秒,F値: F4.0, ISO: 100)
シャッタースピードを長くすると手ブレが発生することは上で述べました。この写真は,カメラを手で持たずに三脚に載せて撮影したものです。
カメラを固定してしまえば,シャッタースピードを長くしても,当然ながら,手ブレは発生しません。

右の写真も,建物の形や色が鮮やかに写し出されています。こちらは,ISO感度をかなり大きくした写真です(シャッタースピード: 0.5秒, F値 F4.0, ISO: 6400)

このように,露出の設定を上手く調整すれば,弱光環境下でも,ヒトの目には見えないものまで写すことが可能です。
常に適正露出を得るように撮影を行なうオート撮影では実現できない,マニュアルモードの強みの1つです。

ところで,シャッタースピードを長くした写真とISO感度を高めた写真は,どちらもパッと見,同じように見えます。
同じ写真が撮れるなら,1枚の写真を撮るのに長時間待つより,ISO感度を高めた方が効率がいいように思われます。
しかし,そう容易くはいきません。写真のサイズが小さいと両者は同じように見えますが,2枚の画像をそれぞれ拡大して比べてみると,違いが顕著に現れます。
次の写真は,上の真ん中の写真と右の写真について,それぞれ,だいたい同じ範囲(写真中央あたりの窓付近)をトリミングしたものです。

digicam_commonmiss04s.jpg digicam_commonmiss05s.jpg

digicam_commonmiss04.jpg digicam_commonmiss05.jpg

左が,シャッタースピード長めの写真から切り出したもの。右が,ISO感度高めの写真から切り出したものです。
左に比べて,右の方が画質が悪いことが見て取れると思います。右はなんかざらざらしています。すでに述べたように,ISO感度を高めると,その分,画質が劣化しやすいのです。
画質を追求する場合は,あまり感度を高くしないでシャッタースピードを長めに取るのがベターです。

しかし,シャッタースピードが長いと,カメラを三脚で固定しても,人物等を撮影するのは困難です。手ブレは起こらなくても被写体ブレが無視できなくなるからです。
感度を高めるかシャッタースピードを長くするかどちらがいいのか,それは被写体の性質によりケースバイケースです。

ところで,上の写真を撮影する際に,フラッシュを焚くことで何とかならないものでしょうか。
次の写真を見てください。同じ場所で,オートモードに切り替えてフラッシュを焚いたケースです(右は,上で示したシャッタースピード長めの写真。比較のために)。

digicam_commonmiss06s.jpg digicam_commonmiss02s.jpg

digicam_commonmiss06.jpg digicam_commonmiss02.jpg

残念ながら,フラッシュを焚いても写真は暗いままでした(写真左隅に少し写り込んでいる隣の建物だけは明るく写りましたが)。
フラッシュの光はそう強くないので,遠くにあるものを充分に照らすことができないのです。

走行中の車内からの撮影

自動車や電車などに乗っているときに,車窓からの眺めを撮影したくなることがあります。
しかし,写したい景色に対して撮影者が動いているので,景色がブレてしまうことが多々あります。
(このブレは手ブレというべきなんでしょうか? 被写体ブレというべきなんでしょうか?)

例: ヤギがいたので撮ったけどブレブレ(右の方の白いのがヤギ)

digicam_commonmiss07s.jpg

digicam_commonmiss07.jpg ...野生じゃなくて,除草のために放たれているそうです。

シャッタースピードを短く設定するか感度を高めることでブレを回避できるかも知れません。

まあ,確実に写真を撮るためには,車両から降りるのが最善です。

近接した被写体の撮影

カメラに対してごく近い距離にある被写体を撮影することを接写といいます(マクロ撮影と言うことも)。
接写を必要とする場面は多々あります。たとえば,小さな動植物の撮影を行なう場合や,小さな測器の撮影を行なう場合などです。

このとき気を払わねばならないのは,ピンボケです。すでに述べたよう,デジカメにはオートフォーカスがあるので,ある程度までは自動的にピントを合わせてくれます。
しかし,ごく近距離にあるものを写す場合には,オートフォーカスが上手く作動しないことがあります。そういうときにはマニュアルフォーカスの出番です。

接写失敗例。定点撮影に使うカメラのシリアルナンバーを控えておこうとしたけど,あえなくピンボケ:

digicam_commonmiss08s.jpg digicam_commonmiss08.jpg

(フィールドワークではこういうミスが怖い。機器のシリアルナンバーなど,後から重要になってくる情報は,
きちんと野帳に記録して,写真での記録は補助的なものと考えるのがいいでしょう)

ちなみに,コンパクトデジタルカメラ(一眼レフカメラ(ごついカメラ)に比べて,小さめのデジカメ)では,特別な設定をしてやらないと接写を行えないことが多いです。
オプションのどこかに,「フォーカス方式」という項目があると思います。そこの設定を「マクロ撮影」に切り替える操作が必要です。
(機種にもよるかも知れませんが,「マクロ撮影」モードにすると,ディスプレイのどこかにチューリップのマークが現れると思います)

また,ピントが合う最短の距離はカメラ(というかレンズ)によって決まっているので,接写を行なう機会が多い人は取説で確かめてみるといいでしょう。

逆光で被写体が黒く潰れる

光源(特に太陽)を背にした被写体を撮影すると,被写体が暗く写ってしまうことがあります。逆光というやつです。こういう感じです:

写真はカミングスーン

背景は明るく写っていますが,人は真っ黒でシルエットしかわかりません(こういう感じで真っ黒になってしまうことを黒潰れといいます)。

なぜこのような写真になってしまうのでしょうか。
基本的に,適正露出となるEVは,撮影しようとしている範囲全体の平均的な明るさに合うように自動的に設定されます
(こういう適正露出の決め方は分割測光(あるいはマルチパターン測光)と呼ばれます)。
背景はすごく明るい・被写体は暗い → 背景の明るさが勝って,背景が適正露出となるように設定され,
その結果,シャッタースピードが短くなる・F値が大きくなる・ISO感度が低めになるなど,露出を抑える設定になり,
陰になってしまっている被写体は極端に暗く写ってしまったわけです。

では,被写体に適正露出が合うように設定してやりましょう。
カメラのオプションに「測光方式」という項目があると思います。その中の「中央測光(あるいはスポット測光)」を選択しましょう。
この設定は,名前の通り,撮影範囲の中央にある被写体の明るさに合わせて適正露出を定めてくれます。
そのようにして撮影しなおすと,次の写真が得られました:

写真はカミングスーン

被写体が明るく写りました!
しかし,今度は背景が真っ白になってしまいました(こういう感じで真っ白になってしまうことを白飛びといいます)。
暗い被写体に適正露出を合わせた結果,シャッタースピードが長くなる・F値が小さくなる・ISO感度が高くなるなど,
露出を高める設定になり,もともと明るい背景が極端に明るく写ってしまったわけです。

明るすぎる背景と,暗すぎる被写体。この相反する状況をなんとかして,両方を適切に写すことはできないものでしょうか。
できます。このようなときには,あえてフラッシュを焚くのです。
フラッシュを焚き,被写体の明るさを高めれば,被写体と背景の両方を上手く撮影することができます。
同じ状況で,フラッシュを焚いて撮影すると,次の写真が得られました:

写真はカミングスーン

被写体も明るいし背景も明るい!

フラッシュというのは周囲が暗いときに使うのが基本ですが,このような状況でも効果的に使うことができるのです。
無論,そもそも逆光にならないようにするのがいいのですが,どうしても逆光の条件で撮影しなければならないときには活用してみてください。

人の目が赤く写る

ここまでで解説してきたこととはあんまり関係ないですが,ついでに。

夜間にフラッシュを焚いて人物を撮影すると,その人の目が赤く写ることがあります。赤目と呼ばれる現象です。
これは,フラッシュの光が,網膜(血管だらけで赤い)に反射して,その光が返ってくるために起こります。

デジカメの機種によっては,赤目防止機能がついているので,それを使うと赤目を抑えることができます。
赤目防止機能をONにすると,撮影用のフラッシュを焚く前に,予め何度かフラッシュが点灯します。
この予備フラッシュによって被写体の瞳孔を狭めておくことで,網膜まで届く光・返ってくる光が少なくなり,赤目を防止できる,というトリックのようです。

こまごましたこと

マニュアルモードを搭載していないカメラでも

冒頭で述べたように,最近のデジカメにはマニュアル撮影モードを搭載していない機種も多々あります。
(デジタル一眼レフカメラにはだいたい搭載されているけど,コンパクトデジタルカメラでマニュアルモードが搭載されているものは少ない)
その場合,シャッタースピードやF値を任意に選ぶことができません。しかし,ここで学んだことを応用することは可能です:

  • 通常,ISO感度は設定できる。フラッシュも焚ける。
  • 露出補正(EVシフト)の機能もたいてい搭載されている。
  • シャッタースピードやF値を明示的に変えられない代わりに,撮影シーンが用意されている。
    • 「夜景を写すモード」とか「スポーツモード」とか「花を写すモード」とか「風景を写すモード」とか。
    • それぞれ,何がどのように設定されるか,ある程度 予想できるのではないでしょうか?
      • たとえば,夜景を写すモードではシャッタースピードが長めに設定されそうです。
        それを利用すれば,あえて夜景モードにすることで,被写体の動きを捉えた写真が撮れるかも知れません。

フィールド調査で写真を撮るときには

フィールドにデジカメを持っていくことは多々あります。必携といってもいいかも知れません。

その際に気をつけるべきことを洗い出してみました:

前準備 ...現地に行く前に確認すること:

  • バッテリーは充電したか?
  • SDカードの空き容量は十分か?
  • レンズに汚れがついていないか?
  • 各種設定は妥当か? (特に,写真のサイズの設定)
    • 共用で使うカメラは,前回に使った人の好みの設定になっているので注意が必要です。
  • 持っていくカメラの操作に慣れているか?
    • 現場での作業は慌しいものです。カメラの設定に時間をかける余裕はあまりない。
  • カメラにストラップを付けたか?
    • 落下・紛失防止のために。慌てたり焦ったりしていると,やってしまいます。
    • 手首にかけられるストラップをカメラにつけて,撮影をするときにはそのストラップを手首に常にかけておくといいでしょう。
      コンデジなら,「手首にかけられるストラップ」はカメラ一式の中に入っていると思います。
    • 首にかけられるストラップを付けるのも悪くないですが,ぶらぶらすると邪魔になるんですよね。
  • 防塵防水耐衝撃のカメラが望ましい。
    • (筑波大流域研メンバーへ: 防塵防水耐衝撃のコンデジが研究室に2台ほどあります。使ってください)

現場で気をつけること:

  • 基本はオート撮影。
    • マニュアルモードでできることを説明してきましたが,フィールドでは色々忙しく,写真を撮るのに時間をかけられないことが多いです。なので基本はオートになるでしょう。
    • ただ,手ブレとピンボケには気をつけましょう。オートで撮影してると気付きにくいんですよね。
  • たくさん撮ろう。
    • 忙しいとは言え,オートなら写真はすぐ撮れます。手が空いたら,ぱしぱし撮りましょう。
    • 作業風景だけではなく,同行者や機材や動植物など,気になったものは撮っておきましょう。後で何が役に立つかわからないものです。
    • 忘れがちなのが,自分の写真を撮ることです。自分が作業をしているときに手の空いている人がいたら,撮ってもらいましょう。
    • フィールドワークの心得も参照のこと。
  • 水平に気をつけよう。
    • 写真の水平を意識しよう。傾いている写真は見づらいものです。
    • 大抵のデジカメには,ディスプレイにグリッド(補助線)を表示する機能があると思います。これを表示しておけば水平を取りやすくなります。
  • スケールがわかるものを写し込もう(後述)。
  • 動画も撮ろう。
    • 作業内容や現地の様子を,後から思い出したり,他人に伝えるには,写真よりも動画の方がよいこともままあります。
  • ポケットにカメラを入れるな。
    • 落としがちです。ウェストポーチとかに入れていくといいです。
    • また,汗による蒸気がカメラをダメにすることがあります。やはり,ウェストポーチなどに入れて,体から少し離しておくといいです。
  • 私は次のポリシーを持って調査に臨んでいます: 「ジャーナリストになったつもりで写真撮れ」
    • 自分で撮った写真でプレゼンするとして,作業内容や現地の様子をきっちり他人に伝えるには,どのような写真を撮ればいいか。
    • その写真は他人にお見せできる質か。

スケールがわかるものを写し込もう

フィールドワークに出て,生き物や機器などの写真を撮ってきたとしましょう。
帰ってきてから写真を確認すると,被写体の大きさがよくわからない写真が撮れていて困ることがあります。
フィールドから帰ってきたばかりなら思い出せるかも知れませんが,数年後に見返すころには忘れているでしょう。
また,そういう写真を他人に見せたり,プレゼンの資料に使うと,少なからず相手を混乱させることになります。

写真を撮るときには,被写体の大きさがわかるように,スケールになるものを一緒に写し込むクセを持つといいです。
一番いいのは,メジャーやものさしを一緒に写しこむことですが,持ってなければペンとか野帳とか手のひらでも充分です。

大きさがよくわからない例 ...この機器の大きさは,名刺サイズ? 手のひらサイズ? タブレットサイズ?

digicam_field01s.jpg

digicam_field01.jpg      

大きさがよくわかる例(大きいナメクジ(ヤマナメクジ)):

digicam_field02s.jpg

digicam_field02.jpg ...リンクを踏むとモザイクの外れた画像が表示されます。スケールを入れてなかったらインパクト半減だっただろう。

リンク集

露出に関する機能を巧みに使った撮影例を挙げて終わります。
ここまでの話を理解していれば「ああ,そういうことね!」とトリックがわかると思います。

  • デイリーポータルZ 壊れたカメラで撮る、1/90秒写真
    • 内容も良いですが,2ページ目の,しぼりのgifアニメが非常にわかりやすいです。
      しぼりがどういうものか知識としては知っていたけど実物は見たことがなくて,このgifアニメを見たときようやくピンと来た。
  • 光の当たり方と見え方
    • とらりもん内リンク。
    • 露出に関する機能とは関係ないですが,これもやはり初めて見たときに心から感心したので。
    • ところで,本ページの「暗い場所での撮影」で示した写真で,夜空が青く写っていることに気付いたでしょうか?
      「太陽光が空気分子によって散乱され」るのは夜でも同じです(この場合は月に反射した太陽光ですが)。つまり,空は夜でも青いのです。
  • Nikon デジタル一眼レフカメラの基礎知識
    • 撮影例ではなく,デジカメ一般の説明。解説が丁寧です。アニメーションを使った図が良い。
    • この「デジタルカメラ入門」で解説していないところまで解説されているので,デジカメをさらに勉強したい人は全部読むといいです。
Last modified:2014/12/26 22:56:44
Keyword(s):
References:[トレーニングコース] [とらりもんHOME] [デジタルカメラ中級編]